無人宅配の夢乗せ出発

運転手なしで走る無人運転車の実証実験を17日から神奈川県藤沢市で始めると宅配大手のヤマト運輸とIT大手ディー・エヌ・エー(DeNA)が発表しました。ドライバー不足の解消に役立つと期待されています。この実験が成功し、長距離トラックなども無人化されると、ドライバーという仕事が機械に奪われてしまう時代さえ来かねないことになるでしょう。大きな社会変化をもたらすことは間違いないです。

今回の実験は18年末まで続けるそうです。現行法では公道の無人運転は認められていませんが、将来的には無人自動運転車の導入も視野に入れています。そして心配なのはセキュリティー面ですが、暗証番号やQRコードでボックスの箱を開け、荷物を受け取る仕組みです。

もしこの車ごと強奪されてしまったらと考えるとどうなってしまうのでしょうか。運送サービスを無人化するだけでは問題の解決にはなりません。そもそも暗証番号やQRコードでは、情報を簡単に盗まれるなどして、本人以外でも荷物を受け取られてしまいそうで不安です。

心配はこれにとどまらないが、最優先の課題は今回の実験で公道を走っても問題ないのかどうかを検証することです。16年5月に米フロリダ州で発生した事故では、運転支援機能が搭載されたテスラのセダンのドライバーが死亡しました。この交通事故は自動運転で初めての死亡事故と多くのメディアが報じていました。

無人運転なら誰も乗っていないので、この事故のように運転手が死亡することはありませんが、思いがけないソフトのバグなどにより、急発進などしたら歩行者や対向車の巻き添えは避けられません。こうした場合は一体、誰が責任を取るべきなのでしょう。何よりも問題なのは、事故を起こした「本人」がいないことです。ならば、たとえばヤマト運輸やディー・エヌ・エーが責任を追及されてしまうのでしょうか。そんな事故を考えると気軽に外を出歩くことができなくなってしまいます。

国も法律の改正などが必要になってくるでしょう。公道を走る無人運転に踏み切るのは、技術面での安全性が十分に確認されてからと考えるのが常識だが、さきに紹介したような事故が起きてしまう可能性もゼロとは言い切れません。無人運転での宅配サービスは画期的で夢のあるサービスですが、ドライバー不足を解消する抜本策に本当になるのでしょうか。心配性と言われるかもしれないが懸念は募ります。

参考記事
17日付 読売新聞朝刊(13版)2面
(総合)「無人宅配の夢乗せ出発」